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2020/8/31

SPECIAL INTERVIEW vol.1 – AHKO SUDO

AHKO SUDO

Ahko Sudo / インテリアデザイナー

東京

2か月ごとに設定されるテーマのもと、ストーリーが感じられるモノ・コト・ヒトをキュレーションする「EQUALAND SHIBUYA」。このたび、EQUALANDがキュレーションしたブランドに関わる「ヒト」にフォーカスしたスペシャルインタビューを公開。

第1回目は「エコプロダクトの可能性と、サスティナブルの必要性、そして伝統的な製造方法に新しい価値を見出すこと」を表現したプロダクトを制作するインテリアデザイナー「Ahko Sudo」さんのストーリーを紹介します。

火を発明して以来、人類は長い歴史の中で絶え間なく何かを発明し、つくり続けてきました。それは本能に紐づいているとも言えるし、資本主義という社会の仕組みの中で必要不可欠な歯車でもあります。だけど、だからこそ、2020年のいま、「つくる」という行為について、あらためて考える必要があります。

イコーランドに什器を提供した須藤あーこさんは自身のプロダクトを通して語ります。何かをつくるということは、同時に廃棄されるものを生み出すということであり、デザイナーはその影響についての責任を持つべきだ、と。

「ニューヨークに留学しているとき、買い物をしていて、当然のようにショッパーをいくつも受け取っていたら、現地の友人に「エコじゃないね」って言われたんです。自分では当たり前の行動がネガティブに捉えられるということに衝撃を受けました。国それぞれに独自の文化や考え方があるのは当然ですが、日本での生活の中では環境問題への意識がどうしても低くなってしまう、と思ったんです。私は友人とのコミュニケーションの中で実感できたけれど、その経験がなければずっとわからなかったかもしれません。スペインの調査機関によると、日本は環境問題への意識が先進国の中でも最低クラス。それなのに、気候の変動を世界で一番受けているとも言われているんですよ。」

日本で暮らす人々にとって、異常気象と言われて思い当たる出来事は枚挙にいとまがありません。もちろんその原因は様々な要因が複雑に絡み合っていますが、人間のひとつひとつの行動の積み重ねが、実感できるレベルで地球環境を変えているということは否定できない事実。社会制度、人々の意識、いずれにおいても海外では環境問題がシビアなものとして捉えられています。

「2月にフランスへ行って驚いたのが、飲食店で使い捨てのプラスチックを使うことが法律で禁止されているということです。日本では話にも出ないけれど、欧米の先進国では環境への配慮が社会制度の中に実装されている。自分で調べるなかで、こういったギャップに危機感を感じるようになっていきました。」

そういった気づきを、須藤さんは自らの専攻するインテリアデザインに反映していきます。

「インテリア専攻でプロダクトをつくっていたから、その中で自分ができることをまずは探していきました。私は昔からラタンという素材が好きなんですけど、ラタンは水で濡れて乾くと縮み、その性質を利用して固定するんです。その発想を応用して熱収縮チューブをつかって金属を固定しています。熱収縮率を計算して、金属を固定し、さまざまなプロダクトをつくる。技術的にとても難しいので、試行錯誤を繰り返しました。再生可能な素材を使うという前提はもちろん、つくる過程ではゴミがほとんど出ません。それに、溶接をするときって人体に有害なガスや光が出て、体にとてもよくないんですよね。熱収縮であれば、そのプロセスを取り除くこともできる。チューブ自体ははさみで簡単に切れてすぐに解体できるから、もし不要になっても素材を分別して再生可能なんです。」

実際のプロダクトは、アノニマスで無機的。イコーランドの店頭什器として、空間と調和し、ショップの印象を形作っています。素材をそのまま使うことを意識したというデザインコンセプトは、プロセスそのものの洗練された知性を体現していると言えるでしょう。須藤さんは大学時代を振り返ってこう語ります。

「美術大学って、たくさんのゴミが出るんですよね。教授や学生は、環境への配慮より「自由に作りたい物を作って、社会の役に立つのがデザイナーだ」という意識を強く持っていました。「サステナブルっていう流行に乗らないほうがいい」というようなことを言われたこともあって、そのときは喧嘩しましたね(笑)。私はデザイナーという職業は、生み出すプロダクトが社会にどう影響を与えるかまで考える責任があると思っています。」

彼女が手掛けるプロダクトは、まだ販売することも考えていないそう。そこには、ひとりでは達成できない壁が立ちはだかっていました。

「大量生産に向いていないということが大きな課題です。最近とあるデザインコンペティションに出したのですが、審査員の中では一位通過だったのに、制作部門の「これは量産できない」という意見によってダメだったことがあって。本当に悔しかったですね。プロダクトを量産するのは、デザイナー個人ではできないこと。企業や工場と連携しないと、次のステップに行けない。だから、手を取り合いながら、課題をクリアしていく仲間を増やしていきたいと思うんですよね。」

環境問題は個人の取り組みだけでは決して解決できません。価値観をアップデートし、連帯して、ひとつずつ目の前の課題を超えていく。イコーランドはそういった人と人が共感し合い、手を取って前進するための場所であることを、目指しています。

AHKO SUDO / インテリアデザイナー
東京

1997年東京生まれのデザイナー。
武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業時に制作した、「エコプロダクトの可能性と、サスティナブルの必要性、そして伝統的な製造方法に新しい価値を見出すこと」を表現したプロダクトの提案している。

@irebahko