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2020/10/27

SPECIAL INTERVIEW vol.4 – のーぷら No Plastic Japan

のーぷら No Plastic Japan

ノイハウス 萌菜

東京

2、3か月ごとに設定されるテーマのもと、ストーリーが感じられるモノ・コト・ヒトをキュレーションする「EQUALAND SHIBUYA」。このたび、EQUALANDがキュレーションしたブランドに関わる「ヒト」にフォーカスしたスペシャルインタビューを公開。

第4回目は、プラスチックストローの代替品となるステンレスストローブランド「のーぷら No Plastic Japan」を設立し、無理なく日常に取り入れられる環境保護活動やそれに繋がる行動を発信し、よりサステナブルで循環型のビジネスやライフスタイルを提案する「ノイハウス 萌菜」さんのストーリーを紹介します。

サスティナブルの入り口を広げるために。のーぷらが掲げる、環境問題に社会が向き合うための役割分担

環境問題。それは、最も緊急度が高く、そして最も後回しにされている社会課題です。「のーぷら No Plastic Japan」のノイハウス萌菜さんは、その課題に対して、現実的かつしなやかな姿勢で、独自の取り組みをしているアクティビストです。EQUALAND SHIBUYAでも扱うステンレスストローについての話から、ひとつひとつ段階を踏んで社会を巻き込んでいくという考えについてまで、お話を伺いました。

変な話ですが、買ってほしいわけではないんです

-まず、ノイハウスさんの言葉で「のーぷら」の活動について教えてください。

2年ちょっと前にはじめたプロジェクトが「のーぷら」です。最初のきっかけは、あるカフェに「店内でのお水のカップを使い捨てのプラスチックのものじゃなくてガラスのグラスにして欲しい」という要望のメールをしたこと。そのメールに自分の名前を署名するとき、「ひとりの消費者の意見」として届いてしまうことに違和感があったんですよね。そのメールを出した経緯には、自分の周りの友人たちとの共感があったし、こういう考え方を広げてながら社会と関係性を築いていくためには、団体みたいな形にしたほうがいいんじゃないかな?って思ったんです。

-個人ではなくコミュニティーをつくって、周りの人と手を取り合う仕組みをつくる必要を感じたんですね。

そうです。それで、「のーぷら No Plastic Japan」というわかりやすい名前をつけて、活動をはじめました。今はステンレスストローという商品が代表的ですが、まず情報を発信するということが最初にあって、それを受け取ってくれた人が次のアクションとして手に取りやすい身近なものは何か、と考えて、再利用可能なステンレスストローを販売したんです。

-メッセージを伝えるためにステンレスストローを作っている、みたいなイメージでしょうか?

そうなんです。変な話ですが、買ってほしいわけではないんですよね……。広告を出したり、素敵な写真を撮って「ステンレスストローが流行っている」という伝え方をすれば、もっと購入してくださる方は増えるのかもしれない、でも、あえてそうせずにいます。せっかく選んでもらうなら、無駄にならないように、吟味して大切に買ってほしいという思いがあるんです。

-物を作ることと、環境に配慮するということ。そこには矛盾が生まれてしまう部分があって、難しいということでしょうか?

おっしゃる通り難しいと思います。だからこそ、伝えることとつくることの両輪で活動していくというのが、私の考えです。たとえばエコバッグやタンブラーにブランド名を付けて販売することはできますが、すでに多くの人が持っているし、必要な市場に出回っているものを手にとればいい。でも、ステンレスストローを持っている人はまだそんなに多くないから、市場に存在しないものを生み出すことは、環境に配慮するアクションとして矛盾しないんじゃないかな、と思ったんです。

-たしかに、ステンレスストローは一般的に広く売られているわけではないですよね。ノイハウスさんが環境課題に対してアクションしようと思ったきっかけについても聞いてみたいです。

私はドイツ生まれイギリス育ちで、日本には4年前ぐらいに引っ越してきたんですけど、生活するなかでゴミの多さに気づいたんです。自分で出すゴミの量はもちろん、都心で働く人たちが数十メートル先のコンビニから会社に帰るだけなのにビニール袋を使っているのを目にしたりして。便利さの裏にある悪い面が見えてきたなって。

-残念なことに、日本は先進国の中でも環境意識が低いですからね。

ただ、最近はレジ袋が有料化して、断る人が増えていますよね。商品を抱えて持って帰る人も増えてきました。なんだ!できるんだ!って嬉しくなったんです。「日本は」ってネガティブに捉えるよりも、サービスを重視しすぎてきた社会のいびつさをときほぐしていきたいなって。サービスだけを追求しすぎず、日本のよさを改めて見つめ直してみたらいいと思うんですよね。たとえばプレゼントするなら、過剰に包装するのではなく、風呂敷に包むとか。伝統的な思想の中には、今の時代に沿わせることで新しく生まれ変わるものがある。そうすることで、また別の豊かさが生まれてくるんじゃないかなって思うんです。

-日本の文化のいいところを客観的に見つけられるのは、海外に住んでいた経験のあるノイハウスさんだからこそ、なのかもしれません。

私は日本のアンティークとか古いものが結構好きで。ペンをこういうアンティークのものに入れてるんです。可愛くて小さくて、ボロボロなんですけど、すごく惹かれちゃう。日本ではヨーロッパのアンティークが人気だったりするけど、逆に私はそういうものには惹かれない(笑)。伝統的なクラフトや職人の技術の価値は、外部から再発見されることで、その国で生きる人たちもまた好きになっていく、みたいな流れはありそうですね。相対化されるなかで、自分たちの原点に戻る、というか。

「身近なできることはなんだろう」というメッセージがまずは大事

-最近新しくなったという、巾着袋の話を聞いてみたいです。

もともとつくっていた巾着に問題があったわけではないし、リネンでつくっているから、環境負荷も高くはありませんでした。買ってくださる方も気に入ってくれていたんですけど、自分の中では、きちんと思いを込めているわけではなかったというか…。もっと意義のある作り方をしたいなと常々思っていたところで、大阪のとある工場の方と出会ったんです。その方から、アパレル業界のあまった端切れを使うことができる、という話をいただいて。これなら!と思ったんですよね。これからもっと改善できる部分もあるかもしれないんですけれど、今できるベストが尽せたのかなと思っています。

-今の話を伺って、無理して探すのではなく、自分の出会いの中で共感した人やものの魅力を引き出していくということを大切にされているのかな、と感じました。

環境問題に関わっているアクティビストやインフルエンサーの方々は、みんなそれぞれの役割があると思っています。私はどちらかというと入り口になりたくて。地球温暖化を訴えるデモを主宰するとか、政府と話をするとか、すごく重要だと思うんだけど、私はそういう部分で活動するのではなくて。「身近なできることはなんだろう」というメッセージがまず大事だと思っているんです。何かしたいけど何ができるかわからない、っていう方が多いから、とっつきにくい雰囲気はなくして、「気付く」ことを後押しできたらって。そこからさらに取り組みたい方は他のリソースやムーブメントをフォローしていってもらえたらいいと思うんですよね。

-階段のように、一歩一歩みんなで進んでいくっていうことが重要ですよね。課題に感じているのは、資本主義的な「もっと安く、便利に、いろんなものが欲しい」という欲望によって世の中が回っていて、その仕組みがすごく強いということです。この点に関して、どう考えられていますか?

買わないとビジネスにならないし、経済が回らないと社会はうまく機能しない。それはたしかに事実なんですが、社会の新しいシステムや、新しい仕事が、もっともっと生み出せると思っています。小さな例ですが、今、食材の量り売りのお店の運営にも携わっていて、量り売りの瓶を使い捨てではなくリターン制にしているんです。今後これを1店舗を超えてシステム化するとなると、その瓶を洗う工場が必要になりますよね。そこで、その工場を作ると新しい雇用につながる。はじめは経済的に損することはあるかもしれないけれど、新しい価値観をもとに経済をつないで、循環していけば、もっと良くなるかもしれないなって、希望的観測かもしれないけど、そう思いたいです。

-それを実現するにあたっていろんな人と手を取り合いながら、先ほどおっしゃってたように、それぞれ役割を理解して、色んな円の大きさを少しずつ広げていって、そこに入ってくる人が増えるとどんどん広がっていきそうな気はしますね。

そうですね。一人一人がそれぞれのサイズの円を持っていて、それが重なったり広がったりいながら、1人1人がちょっとずつ何か行動していけば、大きな変化につながるのかなと。

ネガティブな消費が少なくなって、いいサイクルが生まれる

-もう一つ課題を感じるのが、環境問題についてのアクションには、お金が多くかかってしまうようなイメージがあるということです。これは、実際にどうなのでしょうか?

すごく大事なトピックだと思います。エコ=お金がかかるとか、おしゃれとか、そういうイメージは実際にあるし、本当に自分の生活が厳しいという人にとっては、自分ごとにしにくいですよね。ただ、長期的に見れば環境に配慮した選択をすることって、お金を節約できると思うんですよ。時間はかかるかもしれないけれど、「欲しい」という気持ち自体が少しずつ変化していくというか。流行を追いかけなくなって、市場に翻弄されることが減ったり。良いものを買って長く使えば、一回の投資は大きくても、長期的に見れば安く済んだりもしますよね。自分が本当に必要なものだけを買い始めると、どんどんネガティブな消費が少なくなって、そういう意味ではいいサイクルが生まれるのかなと。

-何に幸せを感じるのか、何に価値をおくか、その部分をアップデートしていくということですよね。

そうですね、 私も昔は新しい服を安く買えたら喜んでいたし、消費に幸せを感じていました。でも最近は、「安さには必ず理由がある」と考えています。誰かがどこかで損している、というか。目の前の商品を見てそこまで考えるのは難しいけれど、EQUALANDのTシャツのタグには、生産者の名前が書いてあって、一つの商品の背景にいろんな人がいるってことが伝わりますよね。あのタグ、切ってって書いてあるんですけれど、かわいいから私はそのまま着てるんですよ。母に「ついてるよ」って言われたりしました。

-わかります。自分もタグは切らないで着てますよ。最後に、これからやりたいこと、今後ののーぷらの展開について教えてください。

今はふたつのプロジェクトを進めています。ひとつは、サスティナブルな生活のスターターキットの制作。バスルームで使う石鹸とか、使い捨てないコットンのメイク落としとか、すでに存在するいいものを集めて一つにまとめる役を担っていきたいんです。 もう一つは、日本在住の海外の方向けに、サスティナブルな生活のための情報をまとめたいな、ということです。ゴミの出し方とか、この店に行けばあれが買える、とか。日本語がまだ得意でない方から「困ってるんです」みたいな連絡を頂いたことが何回かあって。そういう情報をまとめられたら役立つと思ったんです。私は日本語ができるから、自分の役目なのかもなって。ちょっと膨大かもしれないんですけれど、まとまった資料を拡散できたら、それもまた、新しい「入り口」になるのかもなって。